Colorful lovers
「もしかして、同情?」
俺の恋心に気付いていて、昨日のあの場面に遭遇していたのなら、このチョコレートの意味をそう捉えるのが自然なように思えた。
俺としては、非常に苦々しい思いになってしまうのだけれど。
「違うよ!」
広瀬は俺の言葉に即座に反応し、とても思い詰めた表情で俺を睨み付けた。
「…………」
こいつって、こんな顔見せる生徒だったっけ?
同じクラスの中でも目立つグループに所属しているものの、俺が広瀬に持っていた印象は『とにかく大人しい存在感の薄い女子』だった。
他の3人が活発過ぎるくらい元気印だから尚更そう見えてしまうのかもしれないが、いつもグループの一番後ろに立って相槌だけうってほんのり笑っているイメージ。
思えば、広瀬とこんな風にまともな会話をするのも初めてだった。
「違うよ…。
昨日の事があってもなくても私は今日これをガリバーに渡すって決めてたよ」
広瀬は必死に俺に訴えかける。
その瞳にはうっすらと涙まで滲んでいて、俺はとんでもない罪悪感に襲われた。
「悪い…。そうじゃなければ、それでいいんだ。
でも、何で今日、なんだよ?」
慌てて宥めるように言った俺に広瀬は必死な表情を崩さないまま口を開いた。