Colorful lovers
「他のチョコレートと一緒にされたくなかったから……」
広瀬が溢した言葉に目を見開く。
「昨日はいっぱいチョコレートもらっていたでしょう?
私のチョコもあの紙袋の中でたくさんの義理チョコの中の1つ…ってことにされたくなかったの。
だから1日ずらした……」
「おい……広瀬…………」
話終わってまた俯いてしまった広瀬の後頭部を見つめる。
" 他の義理チョコと一緒にされたくなかった "
その言葉の意味するところを再確認するほど鈍感な男じゃない。
ただ、このチョコレートの意味を理解した俺は尚更どうしたらいいのか分からない。
「あのさ……広瀬。
このチョコレート、ありがとうな?
でもさ……ーーーーー」
情けないことにその後の言葉が見付からない。
教師として、大人の男として、広瀬が傷つかないような言い方でこの場を切り抜けるのは簡単だ。
でも今はそんな教師にも、大人の男にもなっちゃいけないような気がした。
というか、なりたくなかった。
バリバリと頭を掻きむしる。
事なかれ主義で面倒は絶対ごめん。
だから器用に対応しないといけないのに。
どうしたというのだろう? 俺は。