Colorful lovers
頭に手をやったまま視線を足元に落とす。
自分の爪先と一緒に広瀬のそれも目に入った。
厚手の黒いタイツに包まれた細い足と同色のよく磨かれたローファー。
ふと視線を少し上げて左側に目を移す。
俺の瞳に映ったのは、紺色のピーコートと赤いチェックのマフラー。
広瀬は両手をポケットに入れ、顎先をマフラーに埋めるようにして俯いていた。
ーーー広瀬さんって、私とよく似てるんですよねぇ…
……俺の頭にぴーこの声が甦った。
ほんの1週間前くらいだ。
授業が終わってゾロゾロと帰っていく生徒たちを見送っていたら、ぴーこが不意にそんなことを呟いた。
ーーーはぁ? 何言ってるの?
お前と広瀬じゃ全然キャラ違うだろう。
どこが似てるっていうんだよ?
呆れて聞き返した俺にクスリと笑いかけながらぴーこは言った。
ーーーピーコートですよ。 それとタイツ。
私、高校生の時、広瀬さんとそっくりな格好してました。
それに何だろうなぁ、広瀬さんからは私と同じにおいがする。
ーーー何だそれ? においとかワケわからないし。
どう見てもぴーこと広瀬が似てるとは思えねーけどな…