Colorful lovers
『お前、女らしさとか可愛げとか全然ないよなー。
だからこんなに楽なのかな、一緒にいても』
少し前に竹田が何気なく言ったこの言葉に悪気はなかったんだろうけど、私はざっくり傷ついた。
中学の時からずっと同級生で気のおけない男トモダチ。
そんな竹田とカレカノの関係になったからって急に何かが変わるわけではない。
私たちは仲がいいけれど、それは同級生の延長線で、周りのカップルたちみたいな甘さが全然足りなかった。
そもそも私は長女で下に妹が3人もいたから両親に甘えることもできず、1人で何でも解決しようとするクセがある。
それが可愛いげないと言われる所以で竹田とのケンカの原因の殆どだ。
私だって千波みたいに可愛らしい女の子になりたい。
竹田に思い切り甘えてみたい。
だけど、本当にどうしたらいいのか分からなかった。
そんな私でも、せめて、バレンタインという女の子が男性に想いを届けるイベントくらいは可愛らしくチョコレートを渡したい。
箱を手にしたままオロオロしているうちに時間は経ってしまったらしい。
「ただいまー」
竹田の声が玄関から聞こえてきて、私は赤いリボンの箱を冷蔵庫に放り込んで扉を慌ててバタンと閉めた。