Colorful lovers
すっかり吹っ切れたように清々しい表情に変わった広瀬はこのまま帰宅すると言って俺に手を振ってみせた。
「気を付けて帰れよ?」
「うん」
「まずは勉強、だからな?」
「うん」
うん、しか口にしないが表情だけでたくさんの言葉を語っている。
それがまた面白くて、思わず笑みがもれた。
スキップしそうな軽い足取りで横断歩道を渡っていく広瀬を見送ってから、さっき取り落としてしまった紙コップを拾い上げてコンビニのゴミ箱に捨てる。
「…………はぁ?!」
ガラスの向こうで楽しげに手を振る人物にすっとんきょうな声が出た。
「話長い!なかなか店から出れなくて参っちゃったよ」
白いビニール袋を手に下げてコンビニから出てきたのは日吉 清海。ぴーこの兄貴。
「…………いつから見てたんだよ」
思い切り睨み付けて言ってやったけど、日吉はまるで気にするでもなく飄々としている。
「ナベちゃんが1人で煙草吸ってるときから。
吸い終わる頃声かけようと思ったら…ね?」
俺の顔を見上げながらニヤリと笑った日吉の頭を真上からど突いてやった。
「いだっ!!」
本気で痛がって悶える姿を眺めながら盛大にため息をつく。