Colorful lovers
俺の少し手前で立ち止まったお義父さんが踊子の手を離す。
真っ直ぐ俺を見つめて、小さく頭を下げた。
「娘を…踊子をお願いします」
その声は少し震えていて、お義父さんの頬を涙が滑り落ちる。
この人だけは…お義父さんだけは泣かないんじゃないかと思ってたのに。
いつも冷静でどちらかというと厳格なお義父さん。
自分なりの優しさと信念で踊子を守り続けていたお義父さん。
俺がお義父さんを越えられることはないだろう。
だけど、同じくらい大切にしなきゃ。
踊子のこと。
その涙を見て、改めて心に誓う。
俺は、唇をぎゅっと一度噛み締めてから言った。
「任せてください」
その言葉を合図にしたようにお義父さんから俺へ踊子が引き渡される。
俺の手をとって、横にやって来てくれた踊子の耳元にそっと囁いた。
「すげー、綺麗」
それまでずっと伏せていた顔をあげてちょっと得意気な微笑みを見せてくれた踊子の頬は、
俺の予想通り既に涙で濡れていた。