Colorful lovers
「ほら、鼻水が垂れそう」
シンタがもう一度ハンカチを差し出す。
「これ、新品。
俺、ハンカチ2枚持ってきたの。用意いいから」
そう言われて、素直にハンカチを受け取った。
「まさか最初から最後まで一番泣いてるのが新婦でも親族でもなく新郎だった…なんてね。
目に焼き付けたから。お前の大号泣。
いいもの見せてもらったよ。うん」
肩を震わせて笑うシンタの向こう脛を蹴っ飛ばしながら新しいハンカチで涙を拭った。
自分のハンカチは式で泣きすぎて既に使い物にならなくなっている。
「お、お前だってな、同じ立場になれば分かるわ!」
自分たちのために泣いてくれる家族。
俺のもとにゆっくり歩いてきてくれる花嫁の姿。
胸の奥まで染み渡る愛の誓詞。
そんなものを目の当たりにして、感情を抑えられるほど大人になんてそう簡単になれるもんじゃない。
……少なくとも俺は無理だった。
「そーね、確かに、ね……」
シンタは教会内を見渡しながら
「何年先になるか分からないけど、
俺が同じ立場になった時全く泣かない自信はないな。
お前ほど泣ける自信はもっとないけど」
「うっさい!」
もう一度軽く蹴っ飛ばしてやったら、
「痛てぇ!」と笑いながらシンタは大袈裟に足を抱えてみせた。