Colorful lovers
「ばっっっかじゃないの?!」
「だって……」
「だって……じゃない!!!」
雪の喝が2人だけの店内に響き渡る。
いや、カウンター内にはシンタくんもいるから3人か。
だけどシンタくんは黙々と調理に集中しているらしく私たちの会話には一切入ってこない。
もちろん会話は筒抜けだろうけど。
「雪までそんなに怒鳴らなくても…」
唇を尖らせる私の眼前にずいっとスマホのディスプレイが突きつけられた。
「この写真はあんたに見せてやるためだけにふざけて撮ったんだよ?
私だって渉にも鷹野にも見せてないわ。
それをまさかあんた自身が他人に見せるなんて…」
雪は盛大にため息を吐き出してショートカットの髪をかき回している。
「やっぱ私が非常識?」
恐る恐る訊いたら
「あったりまえでしょ!!」
間髪いれず断言されてさすがに私も項垂れた。
私がガリバー先輩に見せた写真。
それは公演が終了した直後、楽屋で倒れ込むように寝てしまった私の姿。
薄ピンクのドレスを着たまま机に突っ伏して眠りこけている私の寝顔ショットだった。
私は雪から自分のスマホを取り返してその写真を改めて見直す。
【眠り姫 (〃ω〃)】
大袈裟なタイトルで後日送信されてきたその写真に当時は雪に猛抗議したけど、何となく気に入ってしまって削除もせずそのままとってあった。
それをしつこかった先輩に根負けして衣装を着たままだからこれで雰囲気は分かるかと見せてしまったのだが…。