Colorful lovers
「千波……」
話終わったら雪はトングを持った右手で額の辺りを押さえながら項垂れていた。
そして暫しの沈黙の後、親友からとは思えない暴言が投げつけられる。
「イタい!サムい!ウザい!」
「ヒドい!!!」
リズムよく私が抗議するのと被さるようにシンタくんがブハッと吹き出すのが聞こえてカウンターに目をやると、シンタくんはお腹を抱えて笑っていた。
「笑い事じゃなーい!
すぐ字をぐちゃぐちゃにして食べちゃうとかあり得ないんだからね。
何にも言ってくれないし!!」
今度はシンタくんに向かって抗議の声をあげると
「いや、何を言えと?
今どきケチャップでメッセージなんてあり得ないでしょ。
時代はデジタルだよ?
千波。じゃ、あんたはどんな反応を望んでたのよ?
そのアナログなラブレターに」
ずいっと身を乗り出した雪から差し出された質問に私は答えに詰まってしまう。
「それはさ……」
チラリとカウンターに視線を向けると散々笑っていたシンタくんは再び調理に戻ったようで私たちに背中を向けていた。
「ーーー照れてほしかったの……かな」
「はい?」
雪が訝しげに眉を潜めた。