Colorful lovers


「いや、書くスペースは十分あったかと思うんだよね。

目玉焼きっていいながら目玉が2つとも潰れちゃった平たい玉子焼きだったじゃない」



私たちの話をいつから聞いていたのか、シンタくんがクスクス笑いながらメインディッシュを運んできてくれた。



「千波!あんた目玉焼きもまともに作れないの?!」


「ちょっと!説教を変な方向に持ってかないで。
シンタくんも余計なこと言わないでよー」



耳を塞ぐ仕草をする私に2人揃ってやれやれと息をつく。




「さ、気を取り直してこれどうぞ。
今日のメイン」


「ありがとうございます。

うわー!すっごい綺麗!!美味しそう!!」



感嘆の声をあげる雪の前に置かれたのはミントグリーンのお皿にのったオムライス。


タンポポ色の卵の上に細いケチャップの赤が斜めに無数に美しく走っているそれは1つの芸術作品みたいだった。


その周りを彩るきちんと面取りされた温野菜たちも宝石みたいに見えた。


シンタくんは料理の腕だけじゃなく盛り付けのセンスも抜群だ。




「雪ちゃんはオムライスが大好物だって聞いたから」


「はい! でもこんな綺麗なの勿体なくて食べれないです」


「ハハハ。ありがとう。


でも冷めないうちに食べてね?



ーーーはい。千波はこっち」



にこやかに笑いながらシンタくんが私の前にもお皿を置いてくれる。



「ありがと。


……って、えっ?!


えーー?!」



お皿の上の黄色いキャンバスを目にした私は思わず絶叫していた。








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