君の記憶に僕は。
流星の如く。
初夏、七月下旬
君と初めて会ったのは、確か初夏のあの日だった。
僕はサイクリングロードとして鋪道された川の土手を、カラコロと音が鳴る自転車で走っていた。
学校から家までの一直線、まっすぐのびる土手は、息苦しいほどの夏草の匂いで満ちていた。
川面が太陽の光を乱反射させ、眩しい。
うんざりするほどに降り注ぐ蝉時雨をくぐり抜け、貨物列車が走る鉄橋の下に差し掛かった、その時だった。
何か、うずくまっているようなシルエットが視界の端に映りこみ、存在を強調してくる。
慌ててブレーキを踏み、自転車を停めた。
君だった。
柔らかなこげ茶色の髪を風になびかせ、君が座りこんでいた。
君はよく目立つから、すぐに君だって分かったよ。もしかしたら僕の目が、君を無意識のうちに探していたのかもしれないけれど。
自転車から降り、君のもとに近づいた。
あと三歩ほどで君の横につくというところで、君が顔をあげた。
君は泣いていた。すん、と洟をすする。
慌てて尋ねた。「どうしたの?なにかあったの?」君は一度視線を落としてから、「誰?」と聞いてきた。
声は鈴のように凛としていて、君の瞳は何かを強く見つめていた。
君に見つめられるとドキドキしたもんだ。
「藍沢蒼月。蒼に月で、あつき」
「アツキ、どこかで聞いたことある」
「橘さんの隣のクラスだ。知らない?」
「知らない」
「だと思った」
笑うと、君もつられたように薄く笑った。
勿論、初めから期待なんてしていなかったし、知っていてほしいとも思わなかった。
ただ僕が一方的に、君を気にかけていただけだったしね。
君と初めて会ったのは、確か初夏のあの日だった。
僕はサイクリングロードとして鋪道された川の土手を、カラコロと音が鳴る自転車で走っていた。
学校から家までの一直線、まっすぐのびる土手は、息苦しいほどの夏草の匂いで満ちていた。
川面が太陽の光を乱反射させ、眩しい。
うんざりするほどに降り注ぐ蝉時雨をくぐり抜け、貨物列車が走る鉄橋の下に差し掛かった、その時だった。
何か、うずくまっているようなシルエットが視界の端に映りこみ、存在を強調してくる。
慌ててブレーキを踏み、自転車を停めた。
君だった。
柔らかなこげ茶色の髪を風になびかせ、君が座りこんでいた。
君はよく目立つから、すぐに君だって分かったよ。もしかしたら僕の目が、君を無意識のうちに探していたのかもしれないけれど。
自転車から降り、君のもとに近づいた。
あと三歩ほどで君の横につくというところで、君が顔をあげた。
君は泣いていた。すん、と洟をすする。
慌てて尋ねた。「どうしたの?なにかあったの?」君は一度視線を落としてから、「誰?」と聞いてきた。
声は鈴のように凛としていて、君の瞳は何かを強く見つめていた。
君に見つめられるとドキドキしたもんだ。
「藍沢蒼月。蒼に月で、あつき」
「アツキ、どこかで聞いたことある」
「橘さんの隣のクラスだ。知らない?」
「知らない」
「だと思った」
笑うと、君もつられたように薄く笑った。
勿論、初めから期待なんてしていなかったし、知っていてほしいとも思わなかった。
ただ僕が一方的に、君を気にかけていただけだったしね。