終わらないMelody【短編】
終わらないMelody
「先輩〜っ!!」

とびきりの笑顔を向けながら、こっちに向かって、走ってくる“あいつ”。

「新っ!あんた、部活は!?」

あたしの問い掛けにも動じず、あいつは、あたしの目の前で立ち止まった。


こいつの名前は『佐伯 新(サエキ アラタ)』。

あたし達、二年生の後輩で、部活の後輩でもある。

爽やか系のアイドルみたいな、イケメンの新は、入学当時から、あたしに付き纏ってくる、少々めんどくさい奴。

そこそこモテるくせに、あたしから離れようとしない。

本当、バカな子。


あたしの事、好きな訳?

…そんな自信過剰な事、あたしには考えられなかった。

だから、あたしは徐々に、新と関わる事に戸惑いを感じていた。


「先輩と同じ部活がよくて」

そんな理不尽な理由を付けて、吹奏楽部に入部してきた新。

でも、新が真面目に部活に来たのなんて、両手で数え切れる程度だった。

だからあたしは、やる気がないんだなぁと思ってた。

見た目は結構、やんちゃな感じで、吹奏楽なんてガラじゃなさそうだったし。

それになによりも、扱える楽器がないんじゃないかと思ってた。


でも、そんなのは…

あたしの単なる独断と偏見だったんだ――…。



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