終わらないMelody【短編】
「先輩――…」

自分に抱き着くあたしを、新は何とも言えない表情で見詰めていた。

そんな新の心境に、あたしが気付く訳もなく、ただ単純に『新と離れたくない』と言う想いで、あたしは新に縋り付いていた。


すると新は、そのままあたしに話し掛けた。

「ちょっと、先輩に聴いてもらいんです……ピアノ」

どうしてあたしに…?

そう思い、あたしは思わず顔を上げる。

そこには何故か、嬉しそうな…何かを企んでそうな、新の生き生きとした笑顔があった。



―――……。

「―…ねぇ、あたしに一体、何聴かせるつもり?」

「まぁまぁ、いいから聴いててくださいよっ♪」

気合満々でピアノの前に座る新に、あたしはおずおずと尋ねた。

しかし新は、何の気兼ねなく応える。

あたしは更に訳が分からなくなって、首を傾げた。


「じゃ、弾きますよ?ちゃんと聴いててくださいね」


……〜♪〜〜♪


「―…あ…」

新が弾き始めた、その曲は。

紛れも無い、あたしの大好きな曲だった――…。


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