終わらないMelody【短編】
「先輩……?」
不意に掛けられた声。
この声の持ち主に、あたしは直ぐに気がついた。
歌うのを止め、急いで涙を拭った。
「……なんて顔、してるんスか…」
下から覗いたら、あたしの顔は丸見えだったのだろう。
彼は徐々に近づいて来て、あたしの前にしゃがんだ。
目の前には、彼の綺麗な顔。
きめ細かい肌。
吸い込まれそうな、目力のある瞳。
整った眉、長い睫毛。
形のいい薄い唇、綺麗な高い鼻。
ああ…この子の顔って、こんなにもカッコよかったんだ…。
あたしは自然と、彼の頬に手を添えていた。
一瞬、彼はビクッと肩を震わせたけど、少しだけ頬を赤らめて、困ったように眉を寄せると。
自分の頬を触れているあたしの右手を、左手で包み込んだ。
あたしの手より、一回り以上大きな、骨張った手。
彼が『男の子なんだ』って実感する。