捧げる愛、抱きしめる愛

 目覚めると、目の前に広がるのは、灰。

 灰色の天井だ。

 そして、右を向くと、花瓶に挿さる見慣れぬ花。


 上半身を起こす。

 私は誰かの寝床で眠っていた。

 そこまでは理解できた。
 しかし、どこか様子がおかしい気がしてならない。

 周りには、見たこともないものがたくさんある。

 その中には、字と思わしきものが書かれてある物もあった。

 字が、全く読めない。
 クネクネした書体で、もしかしたら字ではなく模様かもしれない。

 我が国ザンドラヴル帝国の文字は、線を用いて表す。

 我が国でないのは間違いないだろう。



 ここで、ハッとした。

 何が我が国だ、もう我が国でも何でもないのに。
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