捧げる愛、抱きしめる愛

 何故私は死に損なったのだ。

 もう次を試そうという気力も湧いてこない。
 自殺すらもできぬのか、虚しいな、私は。

 余りの人生、どう持て囃(はや)そうか。





 ふと、窓を見る。
 カーテンは閉められていない。

 ザーザーと雨が降っている。
 雨粒が窓を打ち付けている。








 人の気配がする。
 一人だ。
 こっちに向かっている。
 この部屋の主だろうか。

 何故私を助けたのかと、問い質してやろうか。
 いや、向こうはこちらの事情を知らぬ。
 自殺など、思ってもみないであろうな。

 とりあえず、助けてくれた礼儀は示さなければならぬ。
 不本意だが。

 あの廃墟は人目につくような場所であったか?
 いや、そこまでは記憶にない。
 だが、私が自殺を図った場所が人通りの多い所のはずがない。
 むしろ、誰もいないはずだ。



 そういえば、胸にあるはずの傷もない。
 何一つ。



 頭が混乱してきた。
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