捧げる愛、抱きしめる愛
若き帝王、気まぐれを起こす。side.怜
今日は組の経営しているクラブの見回りだ。
俺の相棒である坂畑裕貴(さかはたゆうき)は、張り付いてくる女どもを蹴散らしたくてしかたないという様子だ。
正直、馬鹿だろ。
そんな奴ら、視界に入れなかったら存在なんて空気になる。
そんなこともできねえのか?
「若、そろそろ次のクラブに…」
「ああ、わかってる。
…………どけ」
一言俺が言い放つと、サーッと顔を青くして散る女ども。
馬鹿馬鹿しい。
組の車に乗り、次のクラブに向かう。
その途中、俺は何を思ったのか、車を停めろと運転手の崎本に言った。
そこは、路地裏。
何故か行かなくてはならない気がした。
俺は気まぐれなんかで行動するやつじゃないと自分では思っていたが、どうやらそうではなかったらしい。
…面白い。
一体何があるのか、あの路地裏に。
いっきに好奇心が押し寄せてきた。