捧げる愛、抱きしめる愛

 女を担ぎ上げて車に向かう。

 「怜、担ぐのは可哀想だよ」

 「チッ。…わかった」

 女の膝の下と背中に手を回し、俗に言う『お姫様抱っこ』をする。
 どうも女の扱いがわからねぇ。

 裕貴が興味津々で俺を見る。
 その視線が鬱陶しい。
 絶対面白がっている。

 「裕貴」

 「んー?」

 「覚えてろよ」

 途端に冷や汗を流し始めるコイツ。

 「えっ、じょ、冗談だよ。ねっ?ねっ?」

 「知るか」



 車から崎本が出てきて、後部座席のドアを開ける。

 「若、その女性は…」

 女と共に車に乗り込む。

 「訳は後で話す。組に向かえ。出発しろ」

 「わかりやした。坂畑さんは引き続きクラブの見回りですかい?」

 「ああ」

 察しが良い崎本と話すのは苦じゃない。




 それより、この女のことが気になってしようがない。

 横に座らせた女の顔を覗き込むと、生気がない綺麗な顔が見える。




 この女の、瞳が見たい。

 目を見て名前を呼ばれたい。

 名前を、呼びたい。





 この女の毒々しいほどの紅い唇を、貪りたい。
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