捧げる愛、抱きしめる愛

 女の顔を眺めていたら、いつの間にか本家についたようだ。

 崎本が先に降り、ドアを開ける。

 「崎本、俺はこいつを部屋に連れてく。親父とお袋には話を伝えておくから、今日本家にいる奴ら招集かけとけ」

 「了解です。…部屋とは、若の部屋ですかい?」

 「それ以外、ここにまともな部屋があるか?」

 「そ、そうですねぇ、はい。招集の件、いつぐらいで?」

 「一時でいい」

 「わかりやした」

 俺の部屋に連れて行くと聞いて、崎本は驚いていた。
 それもそうか。
 俺は女を部屋に入れたことはないからな、お袋以外。





 自室に行くまで、組員からの視線はちらちら程度だった。
 俺が威嚇していたからだが。

 どいつもこいつも女を抱き上げる俺に驚いてんじゃねえよ。
 うざってえ。



 部屋にはベッドと風呂と机とソファと言った必要最低限のものしか設備していない。
 普段俺はここで寝ないが、ベッドを置いてあったのはよかった。

 女を寝かす。

 無防備に眠るその姿に、俺は誘っているんじゃないかと錯覚しそうになる。



 寝ている姿にさえ、誘惑される。



 ちょっと前の俺じゃ考えらんねえ。
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