捧げる愛、抱きしめる愛
非常にゆったりした黒い衣服。
「誰のものなのだ?」
「俺の。それより、魔法って…どういうことだ?」
「わざわざ着せていただけるとは。感謝する。…どういうこと、とは?」
「…この世に魔法が存在するとは思わなかった。だが、目の前で見せられたら信じるしかないだろ」
「待て、"存在するとは思わなかった"だと?どういうことだ、魔法が存在することなど、常識だが?」
「…お前……!」
レイは何故か目を見開いて驚いている。
「自分でもこんな馬鹿げたことを言う日が来るとは思わなかったが…カロッサは、こことは違う世界…異世界から来たのか…?」
────────異世界。
ザンドラヴル初代国王は、強大な魔力を駆使して異世界への扉を開き、度々異世界に出向いていたという。
他にも、異世界に行ったことがあると発言した者は多い。
故に、『異世界』という存在は、特に珍しいものでもない。
馴染みがあるというわけではないが、「異世界に行った」と発言すれば、大体の人が疑いもせずに信じる。
見たことのない花、見たことのない文字、見たことのない衣装……。
ここは、異世界なのか。
案外すんなり受け入れることができた。