捧げる愛、抱きしめる愛

 何も出来ない非力な女と言われているようで、腹が立つ。

 「…これからは自分のために生きろ」

 「今までも自分のために生きてきたが」



 「どこがだ!!!」

 突然大きい声を出したレイに驚く。

 「…私が何故民に『追放されてやる』と申し出たか教えてやろう。私はな、断頭台で死ぬのは嫌ではない。しかし、民の前で死ぬのが嫌なのだ。女帝の断頭と聞けば、民は喜んで見物しに来る。何も出来ない姿を誰にも見られたくないという私の我儘だ」

 「そんなの…全然我儘じゃねぇだろ…」

 「だから、私は人気(ひとけ)のない場所で自殺した。結局できなかったが」



 最後の言葉はもう、自嘲だった。

 「少しくらい人を頼るってこと、できねえのか?」



 ふわり。
 この部屋と同じ香りが迫った。

 レイの香り。
 不快感はない。



 何故、私はレイに抱きしめられているのだろうか。
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