捧げる愛、抱きしめる愛

 「怜はどこにいるの?」

 「若の部屋だよ〜」

 「そうなの。さ、早く行きましょう」







 「カル嬢さ〜、携帯電話くらい持たない?」

 「無理よ。あれだけはどうやっても扱いきれないの」

 「さすが異世界育ち〜。じゃあさ、若のそばにずっといるってのは?俺が呼び出さなくてすむー」

 「あの人のそばにずっといるのは構わないのだけれど」

 「構わないのー?」

 「ええ。怜のそばは落ち着くもの。でも、彼の迷惑でしょう?」

 「ええ〜そうかなぁ〜。若、すっごく喜ぶんじゃない?カル嬢のこと大好きだからねー」

 「………………」

 「ほっぺがホントにすこーしだけ赤くなるっていうのがカル嬢らしいよね〜」

 「……生気のない顔色で悪かったわね。あと、もともと私は嬉しいと頬が赤くなるの」

 「いやいや、そういうことを言ってるんじゃなくて。カル嬢は肌が真っ白だし髪も綺麗な白金だし顔もすーっごく美しいよ〜花のようだよ〜」

 「はいはい」

 「ていうか、若に大好きって言われたら、嬉しいの?」

 「ええ」

 「それって、若のことが好きってこと?」

 「うん?好きじゃない相手に大好きって言われても、嬉しくないわよ。あの人は私の家族よ」

 「恋愛的な『好き』じゃなくて、家族の『好き』か……若、長期戦頑張れ」

 「何で彼を恋愛的な意味で好きになるの?」

 「いや、なんでもないよ」

 裕貴と話しながら長い廊下を進む。




 コンコン。

 2回ノックをして呼びかける。

 「怜、入ってもいいかしら?」

 「……あぁ」

 ガチャリ。
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