捧げる愛、抱きしめる愛
この国の歴史は古く、遡ろうとしても遡れないほどに長い。
ザンドラヴル王国が出来たのは今から七千年前の第六期と聞く。
四千年前から全四大陸を巻き込んだ戦乱の時代である第七期が始まり、そしてその頃にザンドラヴル王国からザンドラヴル帝国へと変化を遂げた。
同時に、ザンドラヴル帝国の軍事力は全四大陸の中で最も強大なものとなった。
それは、四千年経った今でも変わらぬこと。
そのザンドラヴル帝国の女将軍であった私の運命は、父である前王の急死により激しい音を立てて狂い出した。
父には世継ぎがおらず、娘である私しか恵まれなかった。
溺愛していた妻が病で亡くなり、他の女と子を作る気になれなかったからだ。
必ず世継ぎは必要となるのに、この国の帝王とは思えぬ行動だ。
高官たちが王に後妻を作れと進言しても、聞き入れず。
しつこい高官には「余の御膳であるぞ」と帝王の権限をもってしてはね飛ばしていた。
父は母を愛していたがそれ以外には特に興味も関心もなく、それは私に対しても同じであった。
だから私を将軍などという地位に収めたのだ。
「そなたの身などどうでもよいわ」と面と向かって言われたこともあるし、そのことに怒りを抱くことも悲しみを持て余すこともなかった。
私にとっても、父など気にもとめてなかったからである。