捧げる愛、抱きしめる愛
現在、この国には初代国王の血を受け継ぐ者が私しかいない。
早く夫を貰い、男子を産めばいい話ではないか、と軽々しく考えてはいけないのだ。
子を授かる間は、誰が国を機能させるのだ。
私の夫となる者は王家の血を引いていないため、王の座につくことは許されない。
しかし私も女である故、無理だ。
私腹を肥やすことしか考えていない傲慢な高官たちになどこの国を任せておれぬ。
どうすればよい?
子を授かる期間がいくら短ろうが、民は初代国王によって植え付けられた心のせいで、女帝を否定するだろう。
そこで私は、民に条件を出した。
「子が産まれるまで、私が女帝となる。しかし、それは禁忌。故に、我が子を産んだあかつきには、追放の身となろう」
そなたら国民は、王家の男子が欲しいだけなのだから、と。
すると国民は、追放という言葉にいい響きを覚えたようだ。
ならばそうせよ、と。
民が非道とは思わぬ。
感じるとすれば、同情だけ。
心を植え付けられたことを知らぬ民に、同情するだけ。
私もたいがい酷いではないか。