捧げる愛、抱きしめる愛
私はどこぞの公爵の息子と契りを交わし、子を身ごもっていたが、構わず戦に身を投げた。
私は強い。過信ではない。
魔法は人一倍上手かった。
だから妊娠している身でも戦ができた。
我が国ザンドラヴル帝国を中心とした周辺国との連合軍が他大陸の連合軍を敗戦に追いやったとき、私は何も思わなかった。
ザンドラヴル帝国が中心ということは、つまり、私が連合軍の最高司令官であるということ。
私の作戦で敵軍は散ったにも関わらず、私には何も込み上げるものがなかった。
四千年続いた戦乱の第七期が終わり、第八期を迎えたこの世界を、私はなんとも思っていなかったのだ。
民の為と我が身を尽くしてきた自分に腹が立った。
何が国民の為であるか、結局私は一体何がしたかったのだ。
私は自分の存在自体に疑問を持ち始めた。
体を張って幾度となく戦をしても私に心を開かぬ民。
女はいらぬと切り捨てる民。
私利私欲のことしか頭にない夫。
摂政をしたくてたまらない夫。
娘などどうでもよいと吐き捨てた亡き父。
己の血を自ら祭り上げた愚かな初代国王。
女帝の身にも関わらず国に関心のない私。
こんな国の、こんな世界のどこがよいのか。