空と君との間には
雨は少しずつ激しくなる。


――雨が大降りになる前に帰社したい

黒田は些細な理由で歩を速めた、あの日を後悔する。

西村嘉行の自宅は、1年半と変わらず煙草の匂いがする。

黒田は西村が1年半前より、ふくよかになったなと思う。


「先生、すみません。結城がご迷惑をおかけして」


「相変わらず、ヒールを履いているようだね」

西村は黒田の足に、目を落とす。


「結城くんは最近、辛そうだった……驚いたよ」


「私も心配で、気がけてはいたんですが」


「君の所の社長秘書には気をつけたまえ。ゴーストの話の出所は、どうやら彼女のようだ」


「彼女のことは、こちらでも……結城とは以前からいざこざが」


「もう少し、休ませてやりたい気もするが」


「ええ」


「たまには君も、顔を出したまえ」


「ありがとうございます」
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