空と君との間には
雨は更に強くなる。


結城の自宅、駐車場に着いたのは夕刻。

2人で1本の傘を差す。

結城は黒田の肩が濡れないように、傘を傾ける。


「由樹」


「小降りになるまで雨宿りしてってよ。お茶くらいしか出せないけど」

雨音に掻き消されそうなほど頼りない結城の声。

整然とした結城の自宅。


「詩乃さん、居ないのね」


「まだ、仕事してる時間」

結城はコトリ珈琲を置きながら「濡れなかった?」と訊ねる。


「私は大丈夫」


「そう、……着替えていい?」

右半分、雨に濡れたスーツの上着を脱いで、部屋着に着替えた結城は、やけに幼く見える。

ソファーに体を沈め、「色々ありすぎて、体がついていけない」と呟く。


「俺は沢山江梨子のゴーストなんてしない……誰のゴーストもしていない」
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