空と君との間には
「うん……でも、結城さんの左手の甲には酷い傷があるの」

紗世は黒田が「その手の傷だって」と言いかけた時、結城が凄い剣幕で怒鳴ったのを思い出す。


「それってね、部内の女の子を守ろうとして怪我したんだって。右利きで良かったよね」


「えっ、結城さんは左利きでしょ!?」


「そんなはずない。わたし、結城くんが右手で事務書類に、記入してるのを何度も見てるし」


「……結城さんが右利き」


「それに、あの傷ってかなり深かったらしいよ。詳しいことは知らないんだけど」


愛里の話から、紗世の知らない結城が少しずつ見えてくる。


事故の後を話そうとして、辛そうに顔を歪めた結城の顔が浮かぶ。

――結城さん本人の口から聞かず、愛里から聞いていいんだろうか?


紗世は後ろめたさでいっぱいになる。
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