空と君との間には
「……何で……力んでるんだ……」

結城が胸に手をあてたまま、紗世に顔を向け、笑いをこらえている。


「えっ、力んでなんかないです」


「……可笑しな奴……」


「結城さんは無理しすぎます。そんなに具合が悪い時くらい、ゆっくり休んでも」


「……このくらいで……いちいち休んでいたら……クビだ」


紗世には、結城の目が何処を見ているのかわからない。

確かに自分の方を向いているように感じるが、結城の目は何処か焦点が違うように思える。


――何て遠い目をしているんだろう


紗世は思わず、結城の目の前で掌を広げて振ってみる。


「……目障り」

結城はポツリ呟いて、眉間に皺を寄せる。


結城は黒田が口元に添えた酸素ボンベを、そっと外し「……もう……大丈夫だから」と微かに笑う。
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