空と君との間には
7章 ここにいるよ

1話 ポプラの枝

「クシュン」

車を降りた結城が鼻を擦る。


ミステリー作家、西村嘉行の邸宅前。

邸宅の石垣に沿って、数十メートルポプラ並木が続いている。

4月に花を着けたポプラは花が終わると、綿毛つきの種子を大量につける。

この綿毛つきの種子が風にとばされて空を舞う。

ポプラの並木道は、綿毛で地面が真っ白になる。

結城は西村の邸宅に向かい、庭園を車で走りながら、紗世に「ポプラは英語で『コットンウッド』って言うんだ」と話す。


「クシュッ」


「花粉症ですか?」


「あ……ポプラのせいだ」


車を降りると、くしゃみを数回、結城は鼻声気味だ。


「お前はなんともないの?」


「はい、大丈夫です」


「薬、飲んだんだがな~……全く効かない」

結城は上を向いたまま、鞄からポケットティッシュを取り出し鼻水を拭く。


「体質改善しなきゃ治らないって言いますよね」
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