空と君との間には
「そのたびに、詩乃に見つかって……葬り去りたい自分がいて、自分ではない別人になりたくて……『限りなく』は書き上げた」


「……自殺した人にって、そういう……」


「……投稿しようとか、世に出すとか……考えてもいなかった。……プリンターで打ち出した『限りなく』を、詩乃が勝手に『群青新人賞』に投稿したんだ……」

紗世が目を丸くし、零れた涙を拭う。


「受賞の知らせも詩乃が俺の代わりに受けて……『万萬詩悠』弟は聴唖障害で喋れないからと……嘘をついた」

紗世は口をあんぐり開け、呆けたように結城をじっと見る。


「……『万萬詩悠』は、詩乃のちょっとした嘘から『限りなく』のイメージもあって、勝手に尾ひれ目ひれがついて……『万萬詩悠』像が出来上がっていった」

紗世は、ワイドショー番組みたいな話だなと思う。
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