空と君との間には
相田は良い傾向だと思う。

相田は結城が、浅田とのトラブル以来、人への関心が薄くなったように感じている。

――だが結城は変わってきている

「紗世に癒される」と言った結城の言葉。

相田は、その言葉が嬉しい。


未だ癒えない傷は、結城の元部下、相田自身の彼女も同じだが……。


結城の負った心の傷は、彼女の数倍も重いように感じて、相田自身も心が痛い。

相田は万萬詩悠という、若い作家の作品「限りなくグレーに近い空」も「空と君との間には」も、紗世や相田の彼女が言うように、確かに結城と主人公が被る。


もしかしたら……万萬詩悠は、結城かもしれないという疑念は常にある。

「限りなくグレーに近い空」を読んだ時から、それはずっと消えない。

相田は詮索しようとは思わない。
心の鍵を無理やり壊し、こじ開けたなら、結城は壊れてしまうかもしれない。

不安が常にあり、頭を離れない。
< 270 / 312 >

この作品をシェア

pagetop