空と君との間には
「嫌いな作家の作品の登場人物の仕草を再現できるほどなんて」


「……マニュアル、22ページ『敵を落とすには敵を知るべし』を読め」


「結城……さん!?」

薄目を開けた結城が、紗世に言う。


「窒息しそうな香水の匂いだったな……更に沢山江梨子が嫌いになった」

結城は細く頼りない声で呟く。


「結城さん、どうしてあんなことしたんですか?」

紗世は結城が、沢山の頬に顔を寄せたシーンを思い出す。


「沢山先生に……ゆ、結城さんが、か……顔を」


「あ~、あれか。間一髪免れたな。端からその気はなかった」


「もし、先生が遮らなかったら先生に、そ、その、キ、キ」


「麻生、あんな厚化粧ババアにキスなんかするわけないだろう、気持ち悪い」


「えっ? でも~」


「ちゃんとリサーチ済みだ。沢山江梨子はキスコンプレックスなんだよ」
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