空と君との間には
詩乃の顔に笑顔が浮かぶ。


「結城さん」

看護師が再び、詩乃を呼ぶ。

入院手続きを済ませ、詩乃は紗世の手を握った。


「あなたの笑顔、いいわね。由樹をお願い」

紗世は深く頷く。


降り始めた雨が激しく窓を打ち、雨音が響く。


「麻生さん、行くわよ。由樹のゴースト疑惑を晴らすわよ」


「はい」

紗世は元気にこたえる。


黒田と共に、雨の中を颯爽と、病院を出ると激しく冷たい雨が打ちつける。

結城の入院を知り、編集部に主だった作家たちから電話が入る。


「結城くんが入院したそうじゃないか? 大丈夫なのかね? 結城くんが来ないとイメージが沸かない」

梅川百冬は拗ねたようにボヤいた。

霜田奈利子は「早く復活しなさい」とエールを贈った。


沢山江梨子は「会いたいわ」を繰り返した。


「結城くんがいないと寂しいんだが」
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