空と君との間には
ふくよかな分厚い手、節まで脂肪のついた手が、紗世の手を握る。

紗世は「あっ」と思い、マニュアルの花丸色つき項目を思い出す。


「先生の手は暖かいですね、お父さんみたいです」


「お父さんか」

西村はガッカリし手の力を緩める。

結城はやはり下手に抵抗するより「お父さん」は、効果があったなと思う。

紗世は、ソファーに座り大人しく読んでいたかと思うと、急に「ひぃぃー」「うっ」「きゃあー」と声を漏らす。


「麻生、静かに読めないのか」


「だって……お台所用品が犯行現場偽装に使われてるなんて、めちゃくちゃ恐いじゃないですか~。お料理するたび、映像が浮かんできそうじゃないですか~」

紗世の声も顔もひきつっている。


「夜中に目が覚めたら、恐くて眠れないかも……」
< 46 / 312 >

この作品をシェア

pagetop