僕は、先生に恋をした

新潟

はるかの実家

悠人とはるかの父が庭で遊んでいる

そんな二人を
こたつに入りながら見ている
はるかとはるかの母


母『お父さん、あなた達が帰って来て
  本当に嬉しそうよ』

母の言葉に、はるかが笑う

母『それはそうと
  まぁ…帰って来て早々
  すぐにとは言わないけど…
  
  あなたまだ若いんだし
  これを機に
  誰かいい人見つけてもいいんじゃないの?

  お父さんも心配してるのよ
  悠人のためにもはるかのためにも
  この先、誰か支えてくれる人が必要だろうって』

母の言葉に、うつむくはるか


はるか『…でも
    それって相手にとっては重荷だよね』


母『そんなの、相手次第でしょう
  たとえ結婚歴があって子供がいたとしても
  それを引け目に感じる必要はないじゃない

  相手がはるかの事をわかってくれて
  それでもいいって言ってくれるなら

  それでいいじゃないの』


母の言葉にはるかは
何も言い返すことが出来ない


母『あなたは昔っからそう

  周りに迷惑かけないように
  人の顔色ばっかり伺って…

  気が使えるのはいいことだけど
  もっと自分の気持ちに正直に生きなさい』


母の言葉が
痛いほど心にしみる

母の言う通りだ

いつもそうだった

周りに気ばかり使って
自分の本心は出さずに

結局
相手を傷つけてしまう


潤平に対してもそうだ

彼はいつも自分に対して
まっすぐ気持ちをぶつけてくれていた

自分はそんな彼に
逃げてばかりだった


遊園地でケンカした時も

関係がバレてしまった時も

学校最後の日も


いつも彼は、正直な気持ちで
自分と向き合おうとしてくれた

それなのに

そんな彼から
逃げてしまったんだ

――――――――――

夜 長野のコテージ


外は真っ白な雪景色

潤平と洋介が缶ビール片手に
座っている

洋介『初日おつかれ~!』
潤平『おつかれ!』

ビールを飲む二人

洋介『今年もまた、ここに来れてよかったよ』

潤平『ん?』

洋介『いや…
   正月に山こもる奴なんて
   なかなか居なくてさ
   居ても彼女と年末年始過ごすって奴ばっかり…

   お前くらいだよ
   野郎二人で山ごもりなんて付き合ってくれるのは』


潤平『あはは、なんだそれ』

洋介の言葉に笑う潤平

そんな潤平を見て
洋介が言う


洋介『お前…橘先生とはどうなってんだよ』

その言葉に
潤平の表情が一瞬曇る

潤平『どうって…

   俺にはもう、どうしようも出来ないから』

洋介『先生が新潟帰ったから、諦めるのか?』

何も答えられない潤平

洋介『…先生に連絡してみろよ』


洋介の言葉に
テーブルの上に置かれた

携帯を見る潤平

――――――――――


テーブルの上には何本ものビールの空き缶

それを片付ける潤平

その隣では
洋介が横になって寝ている


潤平『洋介、こんなとこで寝たら風邪ひくぞ』

洋介『うーん』

動こうとしない洋介を抱えて
寝室の布団まで連れていく潤平

潤平『…重っ』

洋介を布団の上に寝かせて布団を被せる
すやすやと布団で寝ている洋介


リビングに戻り
また、ビールを飲み始める潤平

ふと、テーブルの上の携帯を見る

携帯を手に取り
はるかの番号を開く

しかし

通話ボタンが押せない潤平

――――――――――

その頃

はるかは居間に座り
窓越しに見える
満天の星空を見ていた

決して都会では見ることの出来ない風景が
そこには広がっている

昼間、母が言っていた言葉を
思い出しているはるか

『もっと自分の気持ちに正直に生きなさい』

その母の言葉が
胸に突き刺さっていた

――――――――――

携帯電話を持ったまま
通話ボタンが押せずにいる潤平

その時

潤平の電話が鳴る

はるかからだ

潤平が急いで電話に出る

潤平『せ、先生?』

はるか『…望月くん』

潤平『ビックリした~』

はるか『…驚かせてごめんね』

潤平『どうしたの?』


潤平の言葉に
一瞬無言になるはるか

はるか『あの…
    特に用事はないんだけど…』


電話したのはいいが

何を話していいのかわからず
戸惑うはるか

ましてや

自ら潤平の前から去ったにもかかわらず
電話をしてしまったことに

後悔を感じていた

はるか『…ごめんね

    自分から離れたくせに
    電話するなんて勝手過ぎるよね

    ごめん、もう切るね


そう言って
電話を切ろうとするはるか

潤平『待って、先生!
   もう少し…声が聞きたい』


潤平の言葉に
もう一度携帯を耳に当てるはるか


潤平『先生が電話してくれて嬉しいよ
   …もう俺には何も出来ないと思ってたから』

はるか『…何も言わずに学校辞めてごめんね
    
    もう、これ以上
    望月くんに迷惑がかけれないと思って…』


はるかの言葉に

潤平は何かを吹っ切るような
深いため息をついて

はるかにこう言った


潤平『…先生に会いに行ってもいい?』

はるか『え?』

潤平『俺、先生のこと
   やっぱり諦められないから』

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