僕は、先生に恋をした
僕は、先生に恋をした④
橘家
はるかが合宿から帰ると
悠人がはるかの帰りを待っていた
玄関を開けた瞬間
悠人が走って来てはるかに飛び付く
悠人『ママー!おかえりー!』
抱き付いたまま離れない悠人
安心したように
ギュッと悠人を抱きしめるはるか
悠人の後ろから義母が駆け寄ってくる
義母『はるかさんお帰りなさい
お疲れ様でしたね』
はるかは悠人を抱きしめたまま答える
はるか『お義母さん、どうもありがとうございました』
――――――――
望月家
日曜日なのに鉄工所で仕事をしている克彦
そこへ潤平が帰ってくる
潤平『ただいま』
作業していた手を止める克彦
克彦『おう、おかえり』
潤平は目も合わせず家に入る
元気のない潤平を見て
不思議に思う克彦
――――――――
次の日
望月鉄工所では
なにかを振り切るように
潤平が一心不乱に仕事に取り組んでいた
休憩時間
ぼーっとしている潤平の目の前に
缶コーヒーを差し出す楠木
潤平『…いただきます』
缶を空ける潤平に楠木が切り出す
楠木『楽しかったか?合宿』
その言葉に一瞬つまる潤平
グッとコーヒーを飲んで答える
潤平『…俺、先生に好きって言っちゃいました』
ぶー!!
潤平の言葉にコーヒーを吹き出す楠木
慌てて口に手を当てる
楠木『まじかよ!で?で?で?
どどどどーなったんだよ?』
潤平『先生…すごく困ってました』
うつむきながら話す潤平
楠木『ま、まーそうだよな
そりゃ、先生もビックリするわな』
汚れたテーブルを拭きながら楠木が言う
楠木『まぁ…
お前自身がハプニングを作ったんだ
あとは相手の気持ち次第だな』
潤平『別に俺…
先生の家庭を壊すことも
旦那さんから先生を奪うことも
全然望んでないんです
ただ、先生の顔を見たらつい…』
楠木『うん、うん
気持ちが抑えられなくなっちゃったんだよな
わかるわー
しかしお前も…
大変な人好きになっちゃったな~』
そう言って
悩んでいる潤平の肩を
ポンッと叩く楠木
――――――――
教室
合宿の日から
沈んだままの潤平
授業にもあまり集中出来ていない
それに対し
はるかはいつも通り授業を進めているが
潤平のことをわざと避けるように
目を合わそうとしない
合宿に行った日から
二人の様子がおかしいと感じる夏美
授業後
教室を出る潤平
チラッとはるかを見るが
はるかは生徒と話していて
潤平に全く見向きしない
寂しそうな潤平
――――――――
保育園
子供同士が喧嘩をしている
イジメられているのは悠人だ
止めに入り
悠人を抱きかかえる保育士の先生
しかし悠人は
そんな先生の腕をすり抜ける
保育士『悠人くん!』
先生が叫ぶが
悠人は振り返りもせず
走って保育園を飛び出してしまう
――――――――
橘家
部屋で掃除機をかけているはるか
プルルルルルル
そこに
家の電話が鳴る
掃除機を止めて
電話に出るはるか
保育園からだ
保育士からの話を聞いて
動揺するはるか
電話を切るはるか
心配そうに義母が声をかける
義母『…なにかあったの?』
はるか『…悠人が…
悠人が保育園からいなくなったって』
義母『え…!』
はるかの言葉に
口を手で覆う義母
――――――
はるかが慌てて上着を着ながら
義母に声をかける
はるか『念のためお義父さんに電話していただけますか?
お義母さんは家にいてください
もしかしたら悠人が帰ってくるかもしれないし
保育園から電話がかかってくるかもしれないので』
義母がうんうんと何度も頷く
かなり動揺している
バタン
はるかが急いで家を出る
いつもの公園や
はるかの勤務先の学校へ
悠人を探しに行く
学校にいる教頭に事情を話し
もし来たら保護してほしいと伝える
学校を出たはるかは
商店街に行き
お店の人に声をかけて回る
その時
バイクに乗り、信号待ちをしていた洋介が
偶然はるかを見かける
様子のおかしいはるかを不思議に思い
バイクを止めて声をかける洋介
――――――――
望月鉄工所
仕事をしている潤平に
楠木が声をかける
楠木『おーい、潤平!
お前の携帯さっきからずっと鳴ってるぞ』
楠木の言葉に作業を止めて
携帯の置いてある休憩室に向かう潤平
その間もずっと電話が鳴っている
潤平『…はい』
電話を取る潤平
洋介『潤平!何度も電話してごめん
実は…』
洋介の話を聞き
慌てて仕事場を出ていく潤平
そんな潤平の姿に、楠木と克彦が気付く
バタバタと階段をかけ上がり
作業着から服に着替えて出ていく潤平
克彦が声をかける
克彦『潤平!お前どこいくんだ!仕事中だろ!』
潤平『父さんごめん、俺ちょっと出るわ』
上着を着ながら
そう言って走り去る潤平
そんな潤平を見て
克彦と楠木が顔を見合わせる
――――――――
潤平が走っていると
後ろからバイクに乗った洋介が近づく
バイクに気付き
立ち止まる潤平
バイクの後ろには
はるかが乗っていた
バイクを降りてヘルメットを外すはるか
洋介『先生、俺今からお客んとこ行かないといけないんで
潤平とバトンタッチしますね
1人で探すよりは助っ人がいた方がいいっしょ』
はるか『ありがとう木元くん』
ヘルメットを渡しながらお礼を言うはるか
そこにいつもの笑顔は無い
洋介『じゃ、潤平もし何かあったら連絡して』
潤平『あ…あぁ』
ヘルメットを被り
バイクでその場を走り去る洋介
動揺しているはるかを
心配そうに見つめる潤平
潤平『先生、むやみに探してても見つからないだろうから
重点的に探そう』
はるか『…うん』
――――――――
思い当たる場所を探す二人
だが、なかなか悠人は見つからない
その時
はるかの携帯電話が鳴った
はるか『もしもし、お義母さん?』
電話をしているはるかの声が
涙でつまる
そんなはるかの様子に気付く潤平
電話を切るはるかに声をかける
潤平『先生?』
はるか『悠人…見つかったって』
その言葉に
大きく息を吐く潤平
潤平『よかった~』
安心した潤平は
その場にしゃがみこんでしまう