神様の落としもの
ミーンミンミン…ジィィィィ…

蝉の鳴く音の煩さに俺は目を覚ました。

「イッ…痛ってぇ~。」

体を起こそうとすると節々が痛む。

昨日のテニス張り切りすぎたか?!と思ったが、なんだかいつもと景色が違う。

俺は大きく目を開きキョロキョロ見渡した。

やっぱり…。

昨日、母に電話した後そのまま床で寝てしまっていたのだ。

はぁ…。痛てぇなぁ~、ちくしょぅ!

俺はゆっくり体の向きを変え、なんとか座るまでに至った。

これが実家だったら、誰かが起こしてくれたのになぁ…。

俺はブツブツ呪文のように唱えながらとりあえず着替えた。

手も足も思うように動かない…。

老人の気持ちが痛いほど体に染みた19歳だった。

今日のカバンはやけに重く、いつもの階段もスリル満点だった。

これ落ちたらシャレになんねぇぞ!鉄で出来た階段で頭カチ割れるな…。

俺は必死に階段の手すりを握りしめながら、一歩一歩確実に降りた。
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