神様の落としもの
一階に住む千夏がいつものように窓越しから声を掛けてきた。

「おはよう!今日はやけに遅いじゃん。諦めて遅刻する道を選んだの?」

俺は振り向く事が出来ず、体ごと千夏の方に向けた。

「オッス!今日体が痛くて思うように動かないんだ…。」

俺が苦痛な表情を浮かべながら千夏に話すと、千夏は

「知ってるよ!」

と、ニコニコしながら言ってきた。

「昨日床で寝たでしょ?」

千夏はクスッと笑った。

俺は千夏の話を聞いて、驚いた。

「エッ…?何でわかったの?」

俺は駆け寄って話を聞きたかったが、スムーズに動けない体のせいでゆっくり窓際に近寄って行った。

「内~緒!!」

千夏は椅子に座ったまま上を見上げるだけで教えてくれなかった。

「千夏には何でもお見通しだなぁ~。」

「ふふふっ。まぁねぇ~。今度床で寝てたら携帯に電話して起こしてあげようか?」

そう言い、千夏は自分の携帯電話を持ち、顎にポンポンっと軽く当てて合図をしてきた。

「まじで?!ありがたい!!!頼みます!千夏さん!」

俺は千夏にそう言い、上がらない腕をかすかに上げてその場を立ち去った。

何でわかったのか少し疑問だったが、時間がなかった俺はそんな理由より学校を優先した。

今日は自転車も乗れないし、この老人歩きだと1時間はかかってしまうと見込んでバスで行くことにした。
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