瞳の奥
お昼休みは、あたしにとって最も貴重な時間。
「ふう~・・・」
いつもの場所。薄暗い生徒会室の扉を開けて中に入り込み、カーテンを全開にする。暖かい日差しが気持ちよくて大好きな場所。
ここ、生徒会室は4階の端っこにある。4階といえば移動教室の時くらいしか誰も通らなくて静かでゆったりできておまけに眺めもいい。
今の時期は4月。大好きなこの場所の窓からも桜の木が見えて幸せな気持ち。
この学校は中学受験をしてみんな入っているから今の時期みんなとってもゆるく生活してる。
ふと、下に目線を落とすと学年ごとに変わる制服のリボンが目に入る。
三年生の色は可愛らしい赤だった。真新しいリボンを見て、不思議とまた幸せになった。
私、髙橋優美15歳。まだまだ元気な中学三年生です。
ついでに、「たかはしゆみ」です。ゆうみではありません。
学校では生徒会の副会長になっている。
テストの順位も毎回一桁だし、スポーツも学年女子の中では一番だし。
スクールカーストにおいては上の上の上。いわゆる、『一軍』ってやつ。
自分の意見を言えば絶対に通るし、不自由なんて全くないんだけど・・・。
でも、なんでかな。面白くなくてもつい笑みを作っちゃって。
いつも周りには人がいる。だからずっと笑い続ける。
お昼ご飯を食べるからみんながバラけるこの時間はあたしの唯一の休み時間。
副会長ってこともあって、生徒会室も借りられるしね。
「いただきまーす。」
一人小さく呟くとお弁当を口に運びながら、スマホを開く。
1日大抵100通くらいかな。その位でメールがたまっていってそれを返すのもお昼にする事。クラスメート、告白メール、お呼び出しとか・・・。
『今日の放課後、2年3組来てください。』
3人から似たようなメール。どの順番で行こう、なんて考えていると扉が開く音がした。