冷たい彼-初恋が終わるとき-
唇を尖らしてちょっぴり拗ねる私に桐生君は愉快そうに一台の車を指差した。
「…お嬢さんのご機嫌とりはクレープでいいですか?」
演技っぽい口調で、車販売のクレープ屋に目をやる。
"クレープが食べたい"とそれとなく言ったことを覚えてくれてたのかな。それとも、たまたま?
「…おや、お気に召しませんでしたか?」
まだ紳士口調を続ける桐生君。
こんな超絶美形な彼に執事もどきの台詞を言われるなんて夢のようで、私も高飛車お嬢様になりきってしまう。
「し、仕方ないからあそこでいいわよ!」
「なら早くそう言えブス」
ああ、夢は覚めるのが早い。