冷たい彼-初恋が終わるとき-
私が選んだのは定番のチョコバナナクレープ。
久しぶりに味わうクレープの美味しさには頬が緩んだ。はむはむ頬張ってると、ハッと我に返る。
「お、お金」
「…あ?」
「ちょ、ちょっと待って。クレープ代返すね」
あまりにスマートに払われてしまったから忘れていたよ。
「…別にいい」
クレープを持たない逆の手で鞄の中にある財布を探そうとするが、手を掴まれた。
「な、なら桐生君のぶんを私が買うよ」
「…要らねえ。甘い物苦手だから。素直に食べてろ」
「うー」
申し訳なくてクレープに齧りついたまま唸る。でも、あれ?と目をぱちくり。昨日、桐生君ってクッキーを食べてくれたよね?あのクッキーって結構甘かったはずなのにーーあれ?
何かが可笑しいと首を傾げて桐生君をまじまじと見つめていれば、眉を顰められた。