冷たい彼-初恋が終わるとき-



「…花霞?」

「…っ」



血の気が引いた私を窺う桐生君の声にも反応出来ない。掠れた吐息だけが出て、声が出なかった。


顔を背けた途端、目に入り込んだのは車線を挟んだ向こう側にいる同じ学校の生徒。それは、小田切君だった。隣には、如月さんが歩いている。


二人は話に夢中なのか、こちらには気付いていない。寄り添って幸せそうに笑っていた。離れていても分かるほどに仲睦まじそうで、甘い雰囲気が漂っている。


ズキン、と胸の奥が痛んだ。疼くようなじわじわと、確かにある苦痛。針突かれたような鋭い痛みに、心臓がドクンと脈動した。ちくちくと痛みが襲ってくる。


それでも、何故か思っていたより辛いものではなかった。


いつものように瞼は熱くならない。小田切君を見て泣きたくなったこの間より、少し痛みの量が和らいでいる気がする。
桐生君が、隣にいるからだろうか。




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