冷たい彼-初恋が終わるとき-




桐生君は本当に優しいと思う。だってまだ桐生君は、如月さんのことが好きだったのに、彼女のために退いたのだ。だからあんな悲しげで、且つ優しい視線を送っている。彼女の幸せを願っているから、慈愛の眼差しを向けているのだ。それは私の出来なかったこと。


素直に桐生君が格好いいと思った。
見かけなんかじゃない。中身が。


ドクンと、また心臓が鼓動を響かせる。今度は痛みなんかじゃなかった。何かを訴えるように心臓が強く脈打つ。


好きな人のために自分の感情を押し殺す桐生君が、酷く眩しくて悲しくーーー愛おしさを感じた。





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