冷たい彼-初恋が終わるとき-




ちょっと待て。
そう言われて足を止める。


キッチンに足を進める桐生君の少し後ろで、私は様子を窺う。気を使わせっちゃったのかな。お茶を淹れる桐生君に申し訳なく思った。




「(あ、れ?あのコップ、)」




キッチンカウンターに置かれたコップに目を奪われる。


それだけピンクで、際立っていたから。


明らかに桐生君の物じゃなさそう。海外にいる親御さんの物かと思ったけど、日頃から使いやすいような位置に置かれたコップに、多分違うと思った。


きっと彼の幼なじみである、如月さんの物だ。日頃から出入りしてることを示すそれに、もやっとした。




「花霞?」

「…あ、ごめんなさい」




声をかけられて我に返る。


桐生君の手にはお茶と、お茶菓子。何でもないと誤魔化すと、そのまま桐生君の部屋に連れて行かれた。


でも先ほどの状況が状況なだけにドキドキとかそう言うのはあまりない。ただ、悲しそうな桐生君を見るのが辛かった。



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