冷たい彼-初恋が終わるとき-
花霞side
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ある日一つの転機が訪れる。
それは星絆ちゃんが風紀委員の会議だったので、一人でお昼ご飯を食べていた時の事。
ーー桐生君のことが好き。
理解してしまえば、ストンと胸が軽くなった。
「(うん、桐生君の事は好き。それは確かだよね)」
桐生君に触られたらドキドキするし、触ると無性に愛おしくなる。悲しい顔をしていると私まで沈む。これは“恋”だと思う。
桐生君が沈んでいる海の底から、助けたかった。でも底があまりにも深くて不安だ。
「(…それに、私はまだ小田切君の事が吹っ切れてない)」
姿を見れば胸が痛くなる。諦めきれていないのだ。
どっちに付かずなんて、最悪な女だと自分でも思う。ハッキリしないと、イケないのに。どうすれば良いのか分からない。
相談出来る相手もおらず、溜め息。
ぱくりとウインナーを口に含んで、味わう。滅入る気分で食べるお弁当は、味気ない。そして肩を落としたとき、可愛い声が耳を掠めた。
「あ、見つけた!蓮の彼女さん!」
「え、」
ーー私?
「ふふ、やっと会えた!」
お昼休みに一人寂しくお弁当を食べていた私に、声が掛けられる。
私を探していたみたいでやけに嬉しそうに弾む声。この声の主に心当たりがあった。私がどんなに立ちたいと羨望しても立てない場所に立っている、女性の声である。
「…如月、日莉さん?」
怖ず怖ず顔を上げれば、ほら当たり。
綺麗な顔立ちなのに笑うと可愛らしい。私のすぐ隣には、エクボを作ってにっこり笑う如月さんがいた。