冷たい彼-初恋が終わるとき-
「椎名さん、蓮は良い人?」
「…はい。優しいです」
「ふふ。でしょう?蓮はすごく優しいんだよね」
満足げに頷く如月さん。
ご飯を摘まみながら笑顔でそんな事を聞かれて少し驚いた。
「…随分と、誇らしそう、ですね」
「自慢の幼なじみだからね」
幼なじみ、か。
胸を張って言える如月さんが羨ましい。
私が最初からその立場に居たなら、小田切君に恋する事なく桐生君に惹かれていたのかな。
如月さんは私が持っていないものを、何だって持っている。綺麗めの容貌も、高い身長も、スラッとした手足も、賢さも。小田切君の彼女と言う座も、桐生君の幼なじみと言う立場も。
本当に、羨ましかった。
「蓮も、乙樹も、芽生ちゃんも、大好きな幼なじみだよ。その中でもやっぱり乙樹は特別かな」
照れる如月さんは眩しくて、視線を下に逸らす。
私には輝けるもの何て、何一つ無い。如月さんの周りは輝き過ぎて、私なんか取るに足らない存在だと言われているような気がした。
お箸を止めると、如月さんは困ったように眉を動かした後、小さく吐息を零した。