冷たい彼-初恋が終わるとき-




「…私、蓮には幸せになってほしいんだよね」




どこかで聞いた言葉。


それは別の幼なじみからも聞いた台詞だ。


静かな呟きに如月さんを見やれば、真っ直ぐに私を見ていた。




「だから今日は椎名さんと話がしたかった」




それも聞いた台詞。


世間話をしに来たんじゃないらしい。


桐生君の周りには何でこう、曲者が集まるんだろう。


ゾクッとするような怜悧な双眸は、静かに私を捉えている。


何故か、その表情が桐生君とダブって見えた。




「蓮の気持ちに気付いていながら乙樹を選んだ私が言うのも可笑しな話だけど、私は蓮に幸せになってもらいたい」


「…知ってた、の?」




一瞬、目眩がした。


手からお箸からが滑り落ちる。


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