冷たい彼-初恋が終わるとき-
「言葉で、事あるごとに蓮を縛り付けた。気持ちを知っていながら、一定の距離を保って。そうすれば、優しい蓮は拒めないから。椎名さんの言う通り、私は残酷だよ」
まるで自嘲するかのような笑みにギュウッと胸が締め付けられた。
「蓮が私を避けてるのも知ってた。でも、それでも、私は蓮を引き留めた。乙樹がいるのに、蓮にも傍にいて欲しいって欲張りでしょ?」
如月さんにとって桐生君は、小さい頃からずっと大事にして、引き出しの奥に閉まっていた宝物を手放す気持ちなんだろう。
「だから、貴女に蓮を奪われる事を怖れてる」
重い一言に、息を呑む。