冷たい彼-初恋が終わるとき-
「私もこのままじゃダメだって分かってるのに馬鹿みたいに嫉妬してるんだよ」
「…え…あ…」
「ちょっと寂しくて。早く幼なじみ離れしないと」
あたふたする私に、戯けたように苦笑いする如月さん。
桐生君は“俺の気持ちも考えず”って言ってたけど、彼女は彼女なりに考えていた。
唇を噛み締めると、如月さんはそれとなく言う。
「蓮の気持ちも知ってた。でも私ね、知ってるの。椎名さんの気持ちも」
ドクリと心臓が跳ねた。
背中に冷や汗が流れるのを感じる。
如月さんは私を見透かすように眺めていた。
もしかして、私が小田切君を好きだと知っている?
「椎名さんは迷っている。蓮と乙樹の間を、ふらふらと」
「…っ」
如月さんは全部分かってるんだ。私が小田切君を好きで、そして桐生君が好きな事も。そして今、どちらに傾いているのかも。
彼氏に横恋慕して、挙げ句に幼なじみまで好きになると言う身勝手さに、文句の一つくらい言われても仕方ない。
でも如月さんに、怒った様子はない。彼女は何を言わずただ真っ直ぐに私を見つめてきた。